開高 健
巷の美食家
さすが! |
食通を気取るのを「グルメ」ということについては、私は、実は嫌悪感を持ってる。金にあかせた「似非」食通という印象があるからだ。
さて、この著者が、ミシュランの☆のついているレストランの論評をするわけはない。
自分で釣った魚をあるがままに食べるところが、この作家の人生である。
まずいものを食べなければ旨いものは分からないという視点から、とにかく何でも食べてみるというのが、出発点だから、この本のタイトルは、見事というしかない。
さすが開高健!
単なる美食譚ではありません |
開高健全集から「食」に関するものを厳選してピックアップした選集です。
こうしてまとめて読んでみると、彼がいかに食べかつ呑み、かつ書きしゃべったがよくわかります。
そしてその量と深さにくらくらする想いがします。
この選集の中で特に記憶に残ったのが次のエピソードです。(「大震災来たりなば」)
前半の戦中戦後の食事を再現して食べようという企画です。
都市部に生活している者には、かつては農村や漁村などの「いなか」があり、「いざという時」には田舎に「疎開」することができた。
しかし、今はその田舎がなくなり、避難することすらままならなくなってっしまった。
いまやわれわれは退路のない戦いをしているのだ。
いわば「特攻隊」なのだ。
という趣旨のエピソードがあります。
作品の発表年代が書いていないので正確なことはいえませんが、おそらく30年以上前(2005年時点)の作品だと思います。
その段階で、もうこのような状況があったわけです。
そしてそれが今やもっとひどい状況になっているのです。
「退路のない戦い」…
それでもその「戦い」に勝ち、子どもたちにかけがえのない地球を渡してあげる義務があると思います。