吉田 健一
旨いものはうまい
イギリス文学の大御所の食文化論 |
このシリーズは「グルメ文庫シリーズ」と帯がつけられているが、私は「グルメ」と聞くと、拒絶反応を持つ方の人間である。
「グルメ」=金にあかせた美食家、もしくは、似非セレブ問う印象があるからだ。
著者は、そうした実体を伴わない、見てくれだけの人間を批判して来た人だから、彼のかく「旨いものはうまい」というのは、既存の概念や先入観、一般的な反応を一度否定した上での評価であると思う。
変に「通」ぶらずに、些細なものにも「旨さ」を見つける見識に乾杯である。
ダンディズム |
大岡玲氏も全集の解説に載せていたが、吉田健一には反逆、反抗、ルサンチマンを感じる。
19世紀的な観念的栄達主義を叫びたいならば、脳味噌にメスを入れれば良い、
あるいは原爆で人類を絶滅させれば良い。
生まれてきたからには、幸せに生きるのが一番だ。
文章を書くにしても、旨いものはうまいと言っているのが幸福である。
三島由紀夫が晩年の永井荷風を見て「青年のミイラのようだ」と言っていたが、
吉田健一はミイラにはならず、ダンディになった。
文章に好き嫌いはあるだろうが、ロマンティックだったり、
ダンディが好きな人には是非ともお勧めです。