グルメ・料理・レシピ関連本紹介します。
久住 昌之

孤独のグルメ

孤独のグルメ 人気ランキング : 531位
定価 : ¥ 630
販売元 : 扶桑社
発売日 : 2000-02
発送可能時期 : 通常24時間以内に発送
価格 : ¥ 630
純粋に食を楽しむ

どうと言う事のない、普段喰ってる物の話で、特にあそこの何が美味いとか、あそこのシェフはこういう工夫をしてるぞ、とかいうウンチクグルメの話ではない。

ふらりと立ち寄った店、買った駅弁、デパートの屋上のうどん。
たった一人でする外食。
わびしいか?寂しいか?

主人公の台詞が帯になっている
「モノを食べる時にはね 誰にも邪魔されず 自由で
 なんていうか救われてなきゃあ ダメなんだ
 独りで 静かで 豊かで・・」

たくさんの人間で囲む食卓の楽しさは格別だが、独りで静かに食う飯には「癒し」があるのだ、とまあ大げさに言えばこういうことらしい。

独り月下を散歩するような、静かなドラマに溢れているこの作品は、何ともいえない風情で、グルメ漫画というカテゴリからはみ出している。

外食時間は哲学する

本書に登場する外食屋のうち、4店に行ったことがある。勿論、本書で知ってからのこと。
赤羽、石神井公園、池袋西武百貨店屋上、秋葉原の万世橋である。いずれも、漫画に描かれるとおり! 周りの風景から、空気の色、食事している客までが漫画と同じだと思われた。ある知人によると、店の人までがリアリズムだったとのこと。
これは「食い物屋」の話であって、さにあらず。外回りの営業マンの話である。労働時間の大半を外で過ごす営業マンにとって、食事の時間は「拘束中の自由時間」である。得意先と一緒に食べたり、それこそ酒を飲みに行ったりすることも少なくないが、昼時の一人の食事は、ある種独特の時間の流れが存在する。これはやってみないとわからないけど、経験者であっても、この時間を上手く説明することができない。いや、説明する必要もないのだが、あえていうと、この時間にこそ営業マンの精神現象が、その一端を垣間見せると言えようか。
その精神現象をうまく掬い取っているのが、本書の手柄である。
本書に営業活動そのものの描写は僅かしかない。営業活動そのものは、一般の会社員営業マンの場合、「営業日報」というもののうえに無味乾燥な文体で定着される。しかし、移動時間こそ交通費精算書にその足跡が刻印されるが、食事時間、徒歩での移動時間はどこにも記録されない。振り返って、営業活動でおぼろに思い出されるのは、営業そのものよりも、食事や各種の妄想じみた存念に彩られた徒歩の時間、あるいは電車の中での多分に曲折した想念、タクシーでの運転手との世間話なのだ。いや、人間の過去の生活など、概ねそういうものかもしれない。しかし、ひょっとすると、そんなことだからトップセールスに名を連ねられなかったのかも、との思いは残る。
そんなことまで思わせる沈思をいざなう1冊である。一つの時間論の趣きさえ漂っている。

静かに読める/行きたくなる

某グルメブーム火付け役漫画の如くに、「口の中でプチュプチュと○○が××した所に△△がくしゅくしゅっと溶け出てそれを□□がトロトロッと包み込み云々・・」等というような、口の中で咀嚼した物を一度掌に総て吐き出し、丹念にこと細かく選り分けて見せるような描写はありません。食べる人の表情。感嘆の言葉。実際に店探して食べに行きたくなる、誘われる作品です!!

素晴らしいの一言

モノを食べる時にはね、誰にも邪魔されず
自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんだ
独りで静かで豊かで…

このセリフ!まさに期待通りの久住昌之。
私は「芸能グルメストーカー」から流れ込むようにこの作品に触れた口なのですが、
06年10月時点で実に第14版、作品の息の長さが伺えます。

「ダンドリくん」「かっこいいスキヤキ」等、日常性の中に潜むおかしみを
ダンディズムを交えて語ってきた久住昌之氏と、
狩撫麻礼・メビウス・夢枕獏など錚々たる面々の原作を手がけてきた
職人・谷口ジロー氏の(一部漫画好きにとっての)夢の邂逅。

明確なオチやストーリーなどはありません。
盛り上がるでもなく、しかし決して退屈にもならず、
久住氏の重箱の隅を突くようなこだわりと谷口氏の超精密な絵でもって流れていきます。

それがもう、どうしようもなく、いい。こんな贅沢な漫画もそうそうありません。

ただし、「一家に一冊」という類の本ではないですね。
男がひっそりと独りで読むような、ある種の隠れ家的愉しさに満ちています。
男の本棚に、静かに一冊。

ほっとするぞ、サラリーマン

 僕はグルメでもないし、孤独癖のあるサラリーマンでもない。しかし、この漫画にはものすごく惹かれる。
 食べることってとても大切だ。元気でも、疲れていても、楽しくても、嫌なことがあっても、人間は食べる。食べることは健康だということであり、生きるということでもあるのだ。
 それにしても、初めての店に一人で入るのには本当に勇気がいるなあ。
 これからの人生で、僕はこの本を何回も読むことになるだろう。

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